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竜の血脈(1)




 夜明け前のまだ深い藍色の空を見つめて、サンジは長くため息をついた。今の時間は当番の見張り竜と騎士しかいない。それも尾根から見渡せる見張り台に陣取っているので、かなり遠いため、たとえ首位洞母がこんな時間こんな場所にいることに気づいたとしても、悩ましげなため息の音までは聞こえなかっただろう。
 ここハイリーチェス大厳洞に於いて、サンジはつい最近首位洞母となった。前代の首位洞母のロビンの竜、フルールスが春に交合飛翔に飛び立たなかったため、自動的にサンジが首位洞母となり、大厳洞ノ伴侶であるゾロが統領となったのである。
 サンジは大陸中でたったひとりしかいない男性洞母であった。サンジが黄金竜ラティエスを感合した時、通常は雌である黄金竜は女児を選ぶのだが、孵化場をさまよい歩いた挙げ句、隅にいたサンジを探し出して選んだという出来事に、居合わせた全ての人々は驚愕した。
「男の洞母など、あり得ない!」城砦の太守たちや工房の師などのお歴々は口々にそう叫び、動揺したものだった。
 なぜなら、洞母の伴侶である黄金竜は雌で、雄の青銅竜と交合して次代の卵を産む存在であり、当然のように洞母は青銅竜ノ伴侶の竜騎士と交合飛翔を導く──有り体に言えば身体を重ねる存在だったからだ。
 その考えからしたら、男であるサンジが雌の黄金竜を感合するのは信じられない話であり、実際、長い大厳洞の歴史から言っても初めてのことだった。
 しかし竜の感合は生まれた時にその竜自身が決定することであり、そこには一切の他者による強制や誘導は存在しない。
 確かに感合式にはいろいろ不可思議な出来事が起こることがあり、その時には首を捻るようなものだったが、年月を経ると全てが納得のいく結果を生み出していることを、人々は徐々に理解し納得して「竜はけして間違えない」と言い習わしていた。だが、さすがにラティエスとサンジの感合には誰しもが疑念を拭(ぬぐ)えなかった。
 しかしそれも年月が経ち、黄金竜ラティエスが交合飛翔を果たして無事産卵をすると同時に、サンジが洞母として稀有の才能を持っていることが判明すると、やはりこれも竜の正しい選択のうちであったと皆得心するに至った。
 この時、サンジ十七巡歳。交合飛翔を共に導き大厳洞ノ伴侶となったゾロは二十巡歳だった。



 それから五巡年。
 サンジもゾロも次席洞母と飛翔隊長として安定した能力を発揮してきた。サンジは大厳洞を統括し生活の場を動かしてゆく中心として、そしてゾロは糸胞との戦いの際に飛翔隊を統率し、まとめあげるリーダーとして。
 ハイリーチェス大厳洞はサンジの先輩として首位洞母ロビンと、その伴侶であり大厳洞ノ統領であるシャンクスが長年安定した手腕で発展させてきた。
 しかしつい昨年の春、ロビンのフルールスが交合飛翔に飛び立たないという出来事が起こり、穏やかに、そして自動的に世代交代が行われることとなった。
「俺なんて、まだまだヒヨッコなのに…」
 サンジがふと口をすべらせる。自信がまるでないわけではない。ロビンと共に、そしてゾロと共に様々な諍(いさか)いや争い事を乗り越え、経験も今の自分の年齢にしてはかなり豊富に積んだほうだと自負している。
 それにサンジには、他の竜騎士全てに優る稀有な能力があった。
 通常竜騎士は感合を果たし伴侶となった竜と思念で会話する。それがサンジだけは全ての竜の思念を受け取り、また自分の思念を投げることができた。それはサンジが幼少の頃、竜の遠い親戚と思われるフェルという鱗に覆われた醜い生き物が唯一の友人であったころから自然に発揮されていたのだが、サンジ自身はそれがどんなに貴重な才能であるか、ラティエスを感合した後もしばらくは自覚がなかったほどだった。
 それもとある事件がもとで他の大厳洞ノ統領、洞母や、主だった城砦の太守の知るところとなり、男性であるサンジが黄金竜を感合したのも尤(もっと)もだとようやく納得されたのである。
 ただそれでも、サンジにとっては首位洞母という地位は重いものであった。
 とりあえず前代のロビンがまるきり引退したわけではなく、ゆるゆると実権をサンジに委ねていこうとしているため、いきなり降って湧いた重責に押しつぶされるということはない。
 サンジも既に二十二巡歳。背もすっかり伸び、十代の頃はまだ痩せぎすと見えた身体も、肩幅も胸の厚みもそれなりについて、誰ももう彼を華奢と表現する者はいなくなっていた。ラティエスを感合した直後はさんざん、「本当は女なんじゃねえの」などと陰口を言われていたが、今では見た目でもそんなことを言う者はいなくなった。
 問題は、実は別のところにあった。

 サンジが首位洞母となったことで、周囲がさりげなくサンジに子孫を残すことを薦めるようになった。それは同時に統領となったゾロにも同様で、二人に見目のよい娘を引き合わせようと目論む人間が常に周囲に出没するようになった。
 この世界に於いて婚姻制度は普通にあったが、ただ大厳洞に暮らす竜騎士は特殊な存在としてその制度の枠外にいた。
 なぜなら、竜騎士は既に自分の竜が生涯を共にする伴侶であり、その意味では感合した瞬間、婚姻も成されたと言ってもよいだろう。しかしそれぞれの本能に基づいた繁殖という問題については、ヒトと竜ではそれぞれ事情が違う。竜の交合はその伴侶である竜騎士をも巻き込み、特に黄金竜の交合飛翔では、番(つが)う相手の青銅竜と共に伴侶の騎士同士をもその性の本能で性行為を行わせてしまうが、いわゆる「付き合わされた」騎士は、だからといってそのままそれを婚姻とみなして夫婦としてしまうわけにはいかなかった。
 つまり、黄金竜が必ずしも毎回同じ青銅竜と交合するとは限らなかったからである。
 黄金竜の騎士は大厳洞ノ洞母であり、交合を成した青銅竜の騎士が大厳洞ノ統領となるのは、つまるところ、次代の竜を産む中心である黄金竜と、最も力が強く、速く飛ぶことのできる青銅竜を最重要視した結果であった。洞母と統領は「大厳洞ノ伴侶」と呼ばれ、婚姻による正式な夫婦ではなかったが、かなりそれに近い存在ではあった。
 もちろん、ハイリーチェス大厳洞の先代首位洞母ロビンの黄金竜のように、最初の交合飛翔からずっと同じ青銅竜とだけ飛び、ただの一回も別の青銅竜の介入を許さない例もある。そういう時は洞母も統領も当然同じ騎士が務めることとなり、大厳洞は安定した統治を甘受することができ、なべて歓迎された。
 ただ、当然、竜の交合飛翔と騎士の感情が必ずしもイコールで結ばれない場合もあり、竜騎士はつまるところ貞淑を求められることはなくなる。統領が洞母以外の女性と特別な関係を持ったり、逆に洞母が統領以外の男性と、ということもあり得た。そしてそれに関してはおおらかに黙認され、その関係において子供が産まれたとしても、それは歓迎の声をもって迎えられる。竜騎士の血統は全て尊重されるものであり、特に騎士の頂点である洞母と統領の血を継ぐ子供は、諸手を挙げて歓迎された。統領や洞母自身が育てることができなくても、養い親に名乗りをあげる者には事欠かなかったし、つまり大厳洞をあげてバックアップする体制はできていたのである。

 サンジのラティエスは最初の交合飛翔でゾロのバシリスと飛び、サンジはゾロと大厳洞ノ伴侶となった。ただ、サンジが男性であることから、ふたりの関係は大厳洞を統治する目的に於いての洞母と統領にしかすぎず、ふたりとも生活の真のパートナーとしてはそれぞれ女性とつきあうことが自然だろうと目されていた。
 
「ふーわああああ……」
 サンジが大きくあくびをする。昨晩もゾロと絡み絡まれて実はかなり体力を消耗していた。意外とそういうときこそぽっかりと明け方の妙な時間に目が覚めてしまうもので、ゾロをひとり寝台に残し、尾根が見えるテラス状の張り出し部分に出てきたのである。
 五巡年間。ゾロのバシリスは毎春のラティエスの交合飛翔で必ず他の青銅竜たちを出し抜いてラティエスを掴まえてきた。サンジはその度に嵐のような一時をゾロと分かち合い、しかしそのことに全くわだかまりはない。むしろ最初の交合飛翔の時に感じた怖れを克服してからは、他の誰もが到達できない至高の感覚をゾロと共有することに喜びを感じていた。
 親しい周囲の人間は、彼らが真の意味で大厳洞ノ伴侶であると理解していたから特に何も言わずにいたが、それほどでもない人々は──またそれが大多数でもあったが──彼らは前述のように大厳洞ノ伴侶とは別の、生活上の真の伴侶を必要としているに違いないと思っていた。
「あー…もう考えるのめんどくせ…」
 サンジはまたしてもひとりごとを漏らした。最近、とみに二人の周囲に女性をあてがおうという空気が目立ってきている。以前からなんとなくは感じていたが、この春に首位洞母となるに至ってそれが目に見えるくらいに頻繁に感じられるようになり、正直鬱陶しい。
「俺ぁまだ若造だし」
 とやんわりと避けて来たが、先日、とうとう育ての親のマキノから正面切って話をされた。
「私はね、サンジ」
 マキノは下ノ洞窟ノ長として大厳洞の家政全般を取り仕切っている。それはサンジが幼い頃この大厳洞に引き取られた時からずっと変わらず、長年苦労の多い地位にいるのにもかかわらず、背は常にぴんと伸び、肌の張りつやもサンジの記憶では変化がないようだった。かろうじて、つやつやと輝く黒髪に最近は白いものがちらほらと混じるようになったのが変化と言えば言えたくらいだった。
「あなたとゾロが…洞母と統領という公式の関係以前に、真に大厳洞ノ伴侶であることは解ってるし、それはとても二人にとって喜ばしいことだと思うの。だけど、考えてみて。どんなにあなたがたが…その…強く想い合っていても、二人の間には何も産まれないのよ。確かに大厳洞は竜あってのもので、全ては竜の繁栄、存続が最優先される。だけれども、それと同様に竜騎士も必要なのよ。竜だけでは糸胞と戦えない、そうでしょ? だから、優れた竜騎士はその血統を存続させることを期待されている。特に洞母と統領はその最たるものよ」
「できれば、シャンクスとロビンのように、想い合った者同士の間に子が出来れば、何も言うことはないのだけど、あなたたちの場合それは端から不可能でしょう。あなたの場合はその稀有な能力を是非とも次代に繋げるべきだし、ゾロも飛ぶことと糸胞と戦うことに関して天性の感覚を持っている。青銅竜ノ騎士として、ダントツの能力よ。だから、今すぐにでも子作りに励めというわけじゃないから、せめて少しだけ周囲に目を向けて、頭っから…その…出会いを否定しないでやって欲しいの」
「でもマキノさん…俺ぁ今は分不相応な首位洞母の身分に慣れるのがせいいっぱいで、とても…その…」
「何を自信ないようなことを言っているの。今まで次席とはいえずっと洞母の仕事はこなしてきたでしょ? シャンクスもロビンも共に倒れてしまった時のことを思い出しなさい。今更首位洞母になったばかりだからなんて言い訳は聞かないわよ」
「………」
「それに、あなた達はいっぺん女性とおつきあいすべきだと思ってる。出会いから竜騎士になった経緯、そして交合飛翔。今まであなたたちはお互い以外の存在はなかったでしょう? もちろん、洞母と統領となった今となっては、逆に離れなさいという方が酷、というよりあなたたちの関係が安定していればすなわち大厳洞全体の安定にも繋がるから、強固な結びつきであればあるほど歓迎すべきなんだとは解っているのだけど…」
「………」
「でも、あえて言うわ。男性である以上、本能で女性を求める時があるはずよ。今でなくてもいい。ただ、私のこの言葉を覚えておいて欲しいの。私が言うのも何だけど、女性には女性にしかできないことがある。子を産むってことではなくね。今のあなた方は、ただひたすら人間には女性という性があることを見ないようにしているみたいだわ」
「マキノさん、俺は別に女性をないがしろにしているわけじゃ、」
「あら当然よ。あなたの立場では女性を敵に回すことはあり得ない。あなたはね、サンジ。男でありながら女性しか立てない場所に立っているという不安定さを常に理解しているから、男に対しては男性の立場で、女にたいしては女性の立場で対応して、そしてバランスをとっているのね。まるで寓話のコウモリのよう。だけどそれでは、いつまでたっても女性に対して「男」としての顔を向けられない」
「………」
「だからといって、皆がうるさいから単に言い寄ってくる女と寝ればいいなんて短絡的な解決をしようとしてはダメよ? あなたもゾロも、そんなことを相手がしたと知ったら、お互い軽蔑しないでいられる?」
「じゃあ、一体どうしたら、」
「具体的にこうしなさい、ということは私にはないわ。ただじっくり考えて。そして自分の、自分たちの立ち位置をよく見るの。ゾロとの関係を、結びつきを強く保ったままで、お互いが互いから自由であって欲しい。あなたたちは最初から通常の統領と洞母ではないのだから、シャンクスとロビンや、他の大厳洞の統領洞母たちと同じでいる必要はない。いいえ、同じになってはいけないと思う」
 マキノはサンジの目を下から見上げて覗き込んだ。サンジの左の目は幼いころの酷い栄養状態から白く濁って視力がないので、残った片方の目だけをぐっと見る。
「どういう風になりなさい、ということは誰にも言えないし解らないわ。ただ自分たちがどうしたら自然で自由で、そして強くいられるかを考えないとならない。互いに縛り付けるのではなくね。だから女性ともつきあってみて、視野を広くしてみるのがいいと思うわ」
「それで、ゾロが怒ったら…?」
「それだけで怒るようなら、それまででしょ。まあそんなことにはならないと思うけど。あなたも覚悟を決めなさい、サンジ。ゾロはゾロでシャンクスから話をされているわ。ゾロが女性とつきあうことになったとしたら、あなたは怒るの? ゾロに向かって、俺だけを見て、って言うの?」
 サンジはごくりと唾を飲んだ。ゾロが? ゾロが女性を抱く? いや、ゾロはひいき目を差し引いてみたとしても、かなり女性を惹き付ける容貌をしている。高い背。厚い胸板。低い声は飛翔隊を率いるとき、朗々と遠くまでよく響く。高い鼻梁、広く秀でた額は逞しい身体とは正反対に隠れた知性を感じさせる。そして何よりあの目。すっと切れ長で時によっては酷薄に見えるが、そっと伏せられた時にふと優しい色を灯すのだ。大厳洞の統領という地位に加えて、若く逞(たくま)しく、そしてテルガーの由緒正しい血統を持っている上にあの容貌では、若い女性なら誰しも自分からすり寄ってくるはずだ。
 サンジは口の中に急に砂が入ったような感じを覚えた。上あごに舌が貼り付いて上手く口が開けない。口の中じゅうが乾ききってざらざらする。──ゾロを独占する? とんでもない話だ。

 俺たちは一応、統領と洞母という半分夫婦みたいな肩書きではあるけれど、これは単に交合飛翔のときの相手方であったから付随しているに過ぎない。
 もっとゾロは──もっとふさわしい相手がいてもおかしくない。戦闘で疲弊して戻ったとき、そっと柔らかい身体で包み込んで癒してくれるような、たおやかな女性。そしてゾロの子を産み育て、由緒正しいゾロの血を次の世代に引き継いでくれるような、そんな女性だ。
 俺は全ての竜の声が聞こえるから、糸降りの時は大忙しだ。最中も事後も気が狂いそうに忙しい。はっきり言ってゾロの顔を見ることすらないし、お互い役割が異なるから並んで戦うこともない。全体から見れば助け合っていると言えなくもないが、実際はお互い何をやっているかすらわからない。岩室に戻ったって自分と自分の竜の世話でいっぱいいっぱいだ。平時だって話題といえば仕事のことばかり。今後はもっとその傾向が強くなるだろう。統領と洞母といったって普段はいたってビジネスライクな関係で分業ばかり慣れてしまっている。
 黙り込んだサンジを見て、マキノは目尻を軽く緩ませた。
「まあ…。ちょっとショック受けちゃった? 今までそんなこと考えたこともなかったって顔ね? でもいい機会だから考えてみて。ゾロだけでないわ。あなたもよ。いいこと? これはふたりともに当て嵌まることなんですからね」
 マキノはそっとサンジの頬に手をあてて、ついと指でほお骨を撫でた。遠い昔、サンジがこの大厳洞にころがりこんできてからずっと、マキノはサンジの母親代わりとして彼を慈しみ育て、サンジが竜騎士となって独立してからは、今度は下ノ洞窟ノ長として、影になり日なたになりよくサンジを助けていた。
「ふたりとも凄く立派になっちゃって。私の自慢の息子たちよ、あなた達ふたりとも。私はね、二人の幸せをいつも願っているわ。もちろん今の状態であなた達が満足していることも解っている。でも私の言ったことを考えてみてね。そしてゾロと話し合ってみて。こういうことで一番よくないのは、ひとりで抱え込んでしまうことですからね。勝手に変な結論を出す前に、必ず話し合うこと。いいわね?」
「マキノさん…」
 マキノはちょっとだけ首を傾げてサンジを見た。その顔は下ノ洞窟ノ長のそれではなく、母親が図体ばかり大きくなった我が子を見て困った子ね、という時のそれだった。
「そんな情けない顔をしないの」
 言いながら、そっと両手を拡げる。サンジはマキノの身体に手を回し、軽く抱擁を交わした。幼いころはマキノのエプロンに顔を押しつけ、両手でぎゅうと力いっぱいマキノの身体に抱きついたものだったが、今ではそれは遠い過去だ。それでも首筋から昔と変わらないマキノの匂い──焼き上がったばかりの泡菓子の甘い匂いや、濃く淹れたクラの匂い、今晩の夕食のフェリ肉のたっぷり入ったシチューの匂いなんかが入り交じったものと、あと日の光の清潔な匂いと、薬湯の独特な香りなどなど、総じて雑多な匂いの集大成といったような匂いがたちのぼってきて鼻腔をくすぐった。
 匂いは人の記憶を揺さぶる。サンジもマキノに見守られ、ゾロの後をついて回ってばかりいた幼い頃へと時をさかのぼったような気分になる。
 しかしそんなほの甘い気分を首をひとつ振ってやりすごし、抱擁を解くとマキノの顔を正面から見る。今はもうサンジは親も係累もない傷ついた子供ではない。巨大大厳洞の竜と騎士と、そこに暮らす全ての人間の生活に責任を持つ洞母だ。
 マキノを安心させるように唇を軽くあげて微笑みを作ると、サンジはひとこと、
「わかった。ゾロと話し合ってみるよ」
 と言った。

 

  

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