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竜の血脈(36)




「さて、じゃあ、本格的に行きますか」
 ファイエラが離れていってようやく二人は自らが直面している出来事─交合飛翔─へと集中すべく、手を取りあったまま立ち上がった。
 思念だけのやりとりはほとんど時間という観念を伴わないので、ファイエラとのやりとりは実際にはそれほど時間をくってはいない。それでもその間伴侶の竜たちを百パーセント制御していられないのでひたすら遠くへと飛んでいくのに任せていた。しかし今や何も引きとめる者はなくなったので、二人とも意識を完全に伴侶の竜へと同調させる。
 より高く、より遠く、そしてより速く!
 ラティエスはサンジによって(というよりサンジが盛られた薬によって)むりやり覚醒させられた本能に最初は焦れて苦しげにのたうっていたが、今は広々とした空をどこまでも飛んでゆける喜びに、歓喜の声をあげて本能をそのまま解放していた。
 ドコマデモ、ドコマデモ、イチバン速ク、イチバン遠クヘ飛ンデミセルワ──
 バシリスも雄の本能を久しぶりに解放し、湧き上がる充実感を味わっていた。この三巡年の間、伴侶のゾロは動けずに何度も暗い思いを感じ取っていた。思念は簡単に通じても身体は分かれているために、ただ案じているしかなかった日々はバシリスにも濃く影響を及ぼし、一時は皮膚の色つやは褪せ、げっそりと痩せたこともあった。
 徐々にゾロが回復を遂げるにつれ、バシリスも少しずつ元の通りに綺麗な青銅色を取り戻し、体重も増えていったが、今のような開放感は三巡年の間一回も味わっていない。
 先ほどはゾロが降りられるぎりぎりのタッチ・アンド・ゴーを決め、遥か彼方へ先行しているラティエスを追って解き放たれた矢のように飛んでいった。普段からは到底考えられないような速度だった。
 イタ。アソコデ他ノ青銅竜タチヲカラカイナガラ飛ンデイル。
 バシリスは人間であれば舌なめずりをし、不敵に笑いながらその群れへ突っ込んでいった。

 アレックはあせっていた。ゾロを遠ざけ、サンジに薬を盛り、普段なら考えつかないような方法でラティエスの交合飛翔を誘ったまではよかったが、思いの外サンジが薬に抵抗して意志を保ち、ラティエスを抑えているうちになんと追い払った筈のゾロが戻ってきてしまった。計算外、まるきり計算外のことだった。
 結局この二人の間には立ち入る隙はないのか。
(ばかな。男同士でそれだけ強い絆だと? 男女の、普通の夫婦ですら仲違いをして別れてしまうことだって多いのに)
 実際、二巡年目にサンジはゾロから離れて何とかいう絵付け師の女と暮らしていたではないか。あれも結局はすぐ破綻したらしく、絵付け師はどこか別の城砦だか大厳洞だかへ行ってそこで亡くなったと聞いた。
 ちっ、と舌打ちをして一旦室外へ出る。ゾロとサンジは手を繋いだままジッと動かない。何か目に見えない交流が二人の間に行われているのは黙ってても見てとれたが、妨害しようにもどうやったらよいか解らなかった。
 とにもかくにもラティエスは飛び立った。バシリスが参戦したとはいえ、まだ彼女を掴まえてはいないのだ。まだバシリスが彼女に到達する前に、何か別の算段でルイスがラティエスを掴まえてしまえば何も問題ない。そう、問題はないのだ。

(マア、ドノ青銅竜モ元気ダワネ。ケド、私ニ追イツクコトガデキナケレバ、私ヲ掴マエルコトハデキナイワヨ?)
 ラティエスは雲の上を飛び、山脈を越え、そこで一旦立ち止まってまだ追いついてくる青銅竜たちがどれくらいいるかを確認した。
 いつもの面々がいる。先頭にルイス、最近伸びてきたパルティウス、ハヴァス、レギウスが固まって飛んで、それからミカリス、エナース、カイジスにクロッカス。
(フウン、ナカナカガンバルワネエ。ダケド、コレナラドウカシラ?)
 いきなり急旋回すると上昇気流に乗ってぐいぐいと昇り詰める。とうとう空気が希薄なくらい超高度まで昇った。数頭が脱落したのを認めた後、彼女は急降下を始めた。
(コレデモツイテコラレルカシラ?)
 さらに二頭が脱落した。
 楽しい。楽しくてたまらない。彼女は大きな翼でらくらくと飛んでいられる。持久力、瞬発力の相反する力を同時に持ち、どのような飛び方もできるのだ。
 くるりと反転し、次はどう飛ぼうかと考えていると、弾丸のように突っ込んでくる青銅竜に気がついた。バシリスだった。
(来タワネ)
 ラティエスは、善きライバルであり、数年前まで善き相手であったバシリスを喜んで迎えた。とは言っても身を翻(ひるがえ)して全く別の方角に速度を上げて飛んで行ったのであるが。
 山脈を越え、海原の上を飛び、平原を横切って、雲海の上へも出た。すでにどこをどう飛んだのかわからない。そして今やラティエスに追随しているのはバシリスとルイスのただ二頭だけだった。
 どちらがいいだろうか? ルイスだってけして悪くない。バシリスが参加していなかった近年は速さ、持久力、技術どれをとってもルイスは他の青銅竜たちからぬきんでていた。二頭が並んで飛ぶのは今回が最初なので正直どちらが上なのか、ラティエスすら計りかねていた。
(ナラ、トコトン試シテミマショウ)
 サンジはラティエスに完全に同調していたが、かといってこれは彼女自身の交合飛翔であるため、自身の好悪は押さえつけている。それにバシリスと同調しているゾロに全幅の信頼を置いていた。ラティエスが楽しそうに飛び続けている限り、サンジは口を出す気はなかった。そしてラティエスに思うままに任せて飛んでいたため、またハイリーチェス大厳洞の近くまで戻ってきていることに気が付いていなかった。

(あら? あの、遠くに光ったのって…竜?)
 ようやくデュラメスに乗って飛びたち、ゆっくりとベンデンへ向かおうとしている途中にファイエラが目にしたのは、こちらへ向けて弾丸のように飛んで来る三頭の交合飛翔真っ最中の竜だった。
「まずい!」
 慌てて声に出して叫んだ。このままでは彼らの針路の真正面に向かって飛んで行くことになる。かといって姿を隠すようなところは辺りに見あたらなかった。とにかく邪魔だけはしてはならない。デュラメスをせっついて、慌てて首を巡らして彼らの針路からはずれようとしたが、想像以上に彼らの速度はとんでもなく速かった。
 キエーーッッ! と興奮した声を上げたのはルイスだった。同調しているアレックは計画がことごとく覆されたことに腹を立て、そして正攻法でラティエスに挑んでも、いつもの倍以上の時間を飛んでなおも掴まえられないことに焦れていた。他の青銅竜は既にはやばやと脱落している。並んで飛んでいるのはバシリスだ。つまり、ゾロだ。
 ラティエスを見てもまだ余裕があって緩急取り混ぜて飛び続けている。アレックの焦りがルイスに伝わり、ラティエスを掴まえかけた時も何度かあったのに、毎回するりと逃げられていた。そして更にそれがルイス/アレックを焦らせることとなっていた。
 その時ちょうど彼らの飛行針路上に別の黄金竜を認めた。何でこんなところに? という疑問が頭を当然のようによぎったが、苛々が頂点にきていたルイス/アレックはその速度のまま新しい黄金竜に向かってまっしぐらに飛んでいった。
(危ない!!)
 通常、交合飛翔の時には大厳洞に居る他の黄金竜はそれが済むまで姿を隠している。さもないと興奮した雄の竜が制御しきれずに事故を起こしてしまう心配があったからで、そんなことをすれば竜も騎士も厳罰が待っていることを知りながら、それでも事故というものは常に起こる可能性はゼロとは言えなかったためであった。
 以前、かなり身持ちの緩い洞母が、自身の黄金竜が交合飛翔が近いのを知りながらそれを放っておいて、同じ大厳洞の他の洞母の黄金竜が交合飛翔を開始したとき、充分自分の竜を遠ざけておかなかったため、興奮した黄金竜がつられて飛び上がってしまったことがあった。そのため、もう一頭の黄金竜は青銅竜たちと追いかけっこをしているまさにその最中に、同じ大厳洞の黄金竜が突進してきて、互いに興奮し腹をたて、竜同士で闘うという信じられない出来事の末、両方とも間隙に消え、大厳洞は一度に二頭の黄金竜を失うという悲劇を味わったのだった。
 それ以来、以前にも増して交合飛翔が起こりそうなときは慎重に他の黄金竜たちは距離をとるものであったが、今は偶然にも偶然が重なり合ってデュラメスはその身を三頭/三人に晒してしまった。

 ずっとラティエスと同調していながら、どちらかというと沈黙を保ちながら見守っていたサンジは、ルイスがデュラメスに突進していくのを見て咄嗟に思念でもって怒鳴り声を上げた。更にたたみ込むように思念の声のボリュームを上げる。
(逃げろ!!)
 そうしながら、初めてサンジはラティエスに働きかけ、ぐんと更に速度を上げてルイスとデュラメスの間にその身をねじ込み割って入った。その瞬間、逃げろと言われたデュラメスはそのとおり逃げたのである──間隙の中へと。



(怖い怖い怖い───)
(こんな──こんな凶暴な青銅竜に追いかけ回されるのが交合飛翔なの? そんなのって…)
(デュラメスを感合できて本当に嬉しかった、それは嘘じゃないし、何度繰り返したっていい、けれど、こんな怖い目に遭わなくちゃならないのなら…)
(落チ着イテ! ふぁいえら!)
 ファイエラはデュラメスの背に伏せていた顔をあげた。しかし目を開けても何も見えず何も感じられない。
(大丈夫ヨ。私ガイルワ。アナタト共ニ、イツモ一緒ニイル)
 デュラメスの声が頭の中に響いて、ようやくファイエラは少しだけ落ち着きを取り戻した。
(ここは…間隙の中ね?)
(ソウダ。一番安全ナ逃ゲ道へでゅらめすハ逃ゲ込ンダンダ)
(誰!?)
 聞き覚えのあるような、しかし人間の思念ではあり得ない『声』が聞こえた。
(俺/ワタシハ、らてぃえす/さんじダヨ)
(両方なの?)
(ソウ。ドチラデモアリ、ドチラデモナイ、今ハ。ソレヨリ──)
 ぼわんとしていて、聞き取りにくい声だった。声? 思念? 間隙の中で自分の伴侶の竜以外と言葉を交わしているの、私?
(え、もしかして、一緒に間隙の中を飛んでいる…ということ?)
(ソノヨウダネ。君達ガ間隙ノ中ヘ入ッタ時、俺/ワタシノドコカガ触レテイタノダロウ…ソレヨリ、君ハ何ヲ思ッタ? 『逃ゲロ』と言われてドコヲ思イ浮カベタ?)
(わ、私は…元から私たちの『時』へ戻るつもりだったのよ。そうしなさいってあなたも言ったじゃないの。そしてあの青銅竜がぶつかってきて、怖くて…絶対安全な処へ、私たちの暮らしている大厳洞へ戻りたい、って思った…)
(ソウ、ナラヨカッタ。君ハ安全ニ帰ルコトガデキル。ソノママ照合座標ヲチャント強ク頭ノ中ニ思イ浮カベ続ケテイナサイ──君ダケデモ無事デ本当ニヨカッタ)
(何…なに、言ってるの? あなたは、自分はまるで無事じゃないような言い方しないでよ! 一緒に飛んでいるんでしょう? ならこのまま一緒に──)
(ダメダヨ。君ト一緒ニハ行ケナイ)
(どうして!? 一緒に私たちの時へ来て、ちょっとくらい居てもいいじゃない! 私だって飛べたのですもの。あなたが同じ距離を飛べないわけはないわ。戻るのには私が使ったのと同じ照合座標を使えばいいし)
(…忘レタノ? 俺/ワタシハ交合飛翔ノ最中ダッタンダヨ)
(それが何よ! そりゃ大事な儀式なのはわかるけど、死ぬわけじゃないでしょう?)
 ファイエラは必死で呼びかけた。
(ねえ、私、まだあなたの顔を見てもいないのよ。娘が父親と会いたいと思って何故いけないの? 私、ずっと会いに来てくれないあなたに、嫌われているんだと思っていたわ。それも大きくなるにつれて、もっと悪いことにただ忘れられているんじゃないかと……母さんの下絵帳、あなたの姿で埋め尽くされているのを見て、私がどんな気持ちだったかわかる? 母さんはこんなにもあなたを愛していた。けれど下絵帳のあなたは母さんを見てはいない。やっぱりあなたは母さんを愛していたわけじゃなかったんだ、母さんの片恋だったんだと思って哀しくなったわ。だからあなたは私のことなんか遠くの大厳洞に預けたまま会いにもこないんだろうって)
(最初の時ノ間隙飛翔は、母さんの下絵帳の絵のひとつで、どうしても直に見てみたくなって、それを照合座標に使ったわ。城砦の春の市だった。あなたはゾロと一緒に降り立って、みんなの注目を集めていたわ。その群衆の中に母さんがいた。あなたは一瞬母さんと目があって微笑んだの。その瞬間母さんは恋に落ちた。母さんの目がきらきら輝くのをこの目で見たわ。その後どうやってあなたと母さんが出会ったのかは知らない。私が生まれてすぐに母さんはハイリーチェスを出ていった、その理由も知らない。でもきっと、大厳洞ノ伴侶であるゾロ統領が関わっているのじゃないかと思って、もう一度時ノ間隙を飛んだわ。でもゾロを問いつめてもあなたを束縛しているわけじゃない、って言うし──)
(ソレデカットナッテぞろヲ突キ飛バシタ?)
 こくり、とファイエラは頷き、これでは相手に見えないとあわてて言葉に換えた。
(そう…。本当にゾロには悪いことをしたと思う。でも、それも許してくれたのなら、なおのこと、ちゃんと会って話したいの。あなたと──お父さんと)
(君ヲ悲シマセテシマッタコト、本当ニスマナイト思ウヨ。しりるノコトハ──残念ダッタトシカ言エナイ。俺モ俺ナリニ彼女ノコトハ愛シテイタ。デモ多分、彼女ノ求メタ愛デハナカッタンダト思ウ…)
(ねえ、母さんのこととかも全部もっと知りたいわ。私と一緒に来てよ…)
(ダメナンダヨ。言ッタロウ? 俺/ワタシハ交合飛翔ノ最中ダト。今、俺ノ身体ハらてぃえすノ背ニハナインダ)
(え?)
(ダカラ、モシ君ト一緒ニ君ノ時ヘ飛ンダトシテモ、さんじハ行ケナインダ)
 ファイエラが完全にその意味するところを理解するのに数瞬を要した。そして理解した途端、すうっと血の気が引いて背筋が凍った。
 このままラティエスは彼女に引きずられて未来の時へ行くことはできるだろう。しかしそのとき、サンジの意識はラティエスから切り離されてしまうのではないか? もしラティエスだけが未来へ着いたとして、竜は騎士なくして照合座標は結べない。自分だけで時ノ間隙を飛んで過去へ帰ることは不可能なのだ。それ以前に竜と騎士が離れてしまうということは、どのような意味を持っているか──。
(ソロソロ、俺/ワタシガ繋ガッテイラレルノモ限界ノヨウダ…)
 サンジ/ラティエスの融合思念が弱くなってゆく。
(そっちヘ着いたら、ラティエスだけでも気を配ってくれると嬉しい)
(ダメヨ、さんじト離レテハ生キテイケナイ! ソレクライナラ、ズットココノ中ニ居ルワ!)
 同調が崩れていき、個々の思念がとぎれとぎれに絡まり、またそれが解れてゆく。
 そこへ新しい声が雷鳴のように轟(とどろ)いた。

《行くな! 戻ってこい! 俺と共に飛ぶって言ったのを忘れたのか!!》

 それはあたかも暗闇の中を奔(はし)る稲妻のようだった。一直線にサンジへ向けられた思念は力強く単純で、余計な計算も個人の損得も、取引も思惑も何もない。
(──ゾロ!!)
 サンジの思念が一瞬で歓喜の色に染め上がった。一旦弱まった思念がゾロの思念と融合し、また堅固な強さを取り戻していた。
(ごめんね、ファイエラ。俺たちは戻る。俺たちは共に飛ぶんだ。何度でも。どんな目に遭っても)
 そうせずにはいられないから。

 上も下も右も左も、前も後もまったく何もない真っ暗な空間に在って、その思念は輝かんばかりにファイエラを圧倒した。ああそうか。彼らは──
(お…父さん…ゾロ…)
(私にも、いつか分かるかしら。私にもいつか巡り会うことができるかしら)
 魂の──伴侶に。
 ゾロ/サンジがふわりとファイエラへと触れた、そんな気がした。
(きっと、必ずな)(大丈夫だよ、君なら)
 別れの時が訪れた。何も言わずとも皆それを感じ取った。
(さようなら、お父さん。さようなら…ゾロ。結局会うことは適わなかったけど、来てよかった)
(さようなら、ファイエラ。いつかきっとまた会える。会いに行くよ、俺たち)
 もう会えないと諦め、沈みかけた心が浮上してくる。今度は彼らの方から来てくれる、と?
(私、待っていてもいいの? ずっと待っているわ、その『いつか』の日を。待っているから…!)
 そしてその言葉を最後に、彼らとファイエラは完全に離れていった。

 何もない間隙の中で、ファイエラは前をきっと見据えて脳裏に強く自分の生まれ育ったベンデン大厳洞を細部に至るまで思い描いた。
(懐カシイ我ガ家ヘ帰ルノネ!)
 デュラメスが弾むように言う。
(凄イ冒険ダッタワネ!)
 冒険? そう言い表すにはもっと根本的なモノが違うような気がする。しかしファイエラはデュラメスに異を唱えるようなことはせずに、優しく首筋を叩いて言った。
「本当に、凄い冒険だったわ。貴女も私もこんな遠くまで飛ぶことができるなんて誰も思わないでしょうしね。でも今度は違う方面へ冒険しましょう。過去ではなく未来へ向かって、毎日毎日を誠実に過ごすの。『いつか』を胸を張って迎えることができるように」
 時ノ間隙は長く、冷たく、相変わらず無慈悲で凍えるようだった。その中をデュラメスの存在だけを支えに、孤独に突き進む。気が遠くなるような長さに手足の末端から痺れ感覚がなくなってゆくが、心の奥に暖かい希望の灯が点り、それが彼女に力を分け与え続けた。
 息さえ凍えたかと思えた長い時ノ間隙を抜けると、眼下には見慣れた大厳洞のごつごつした岩肌が拡がっていた。
 そう、どう生まれたかは問題ない。私は黄金竜デュラメスの騎士、これからどう生きるかが大事なのだ。
 ファイエラは大きくデュラメスを旋回させて、自分が属する大厳洞を改めて眺めながらゆっくりと下降していった。

 

  

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